マコモダケ

マコモダケとは?真菰・マコモダケ・マコモ茶の違いをわかりやすく解説

「マコモ」という言葉を検索すると、「真菰(まこも)」「マコモダケ」「マコモ茶」など、よく似た名前がいくつも出てきます。

「真菰とマコモダケは同じものなの?」
「マコモダケはキノコなの?」
「マコモ茶はマコモダケをお茶にしたもの?」

このように、名前がよく似ているため、それぞれが何を指しているのか分かりにくいと感じる方も少なくありません。実は、真菰・マコモダケ・マコモ茶は、それぞれ指しているものがまったく違います。

この記事では、マコモダケとは何なのかを中心に、真菰との関係、マコモ茶との違い、マコモダケができる仕組み、美味しい食べ方、そして古くから日本人と関わってきた真菰という植物の文化的な一面まで、順を追って分かりやすく解説していきます。読み終える頃には、「真菰・マコモダケ・マコモ茶」という似た言葉たちが、頭の中できれいに整理されているはずです。

1. マコモダケとは?秋に出会える不思議な野菜

1-1. 名前はキノコ。でも、キノコではありません

収穫したばかりのマコモダケ

「マコモダケ」という名前を初めて聞くと、しいたけや舞茸のような、いわゆる「キノコ」の仲間を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。語尾の「ダケ(茸)」という響きが、そうしたイメージを連想させるのかもしれません。

しかし、マコモダケはキノコではありません。山の中を探し歩いて見つけるものでもなく、水辺や田んぼのような湿った場所で育つ「真菰(まこも)」という植物から生まれる食材です。

マコモダケは秋に旬を迎える食材で、一般的には9月下旬頃から収穫が始まり、10月を中心に楽しめます。産地や気候によって時期は前後しますが、涼しくなり始める頃から店先や直売所に並び始めます。特徴は、シャキシャキとした心地よい食感と、タケノコを思わせるようなほのかな甘みのある味わいです。見た目も、白くふっくらとした形が独特で、初めて見る方は「これは一体何の野菜だろう?」と驚かれることも少なくありません。

見た目や名前だけでなく、「どうやってできるのか」という成り立ちも、一般的な野菜とは少し違っています。

 

1-2. マコモダケは、真菰という植物の茎が肥大したもの

収穫した沢山のマコモダケ

マコモダケの正体は、真菰という植物の茎が肥大した部分です。

真菰は、イネ科の多年草で、水辺や湿地、川べり、沼などに生育する植物です。稲と同じイネ科の仲間ではありますが、稲のように実(お米)を収穫するために育てられているわけではありません。

食卓に並ぶマコモダケは、最初から「マコモダケ」という別の植物として存在しているわけではない、という点が重要です。真菰という植物の茎の部分に、ある変化が起こることで、その部分が大きく丸く膨らみます。この膨らんだ部分こそが、私たちが食材として目にする「マコモダケ」なのです。

つまり、

「真菰=植物そのもの」
「マコモダケ=真菰という植物の、茎の一部」

という関係になります。この関係性を最初に押さえておくと、この後の説明もぐっと理解しやすくなります。

 

1-3. なぜ真菰の茎が肥大するの?

クロボ菌に感染して茎が肥大化する真菰

では、なぜ真菰の茎だけが特別に膨らみ、マコモダケになるのでしょうか。

その大きな理由のひとつが、真菰と「クロボ菌」と呼ばれる菌との関係です。クロボ菌が真菰に寄生すると、茎の組織が肥大し、マコモダケが形成されます。この肥大した部分が、私たちが食用として利用しているマコモダケです。

一見すると、水辺に生えるただの草にしか見えない真菰。しかし、そこに小さな菌が寄生することで、シャキシャキとした食感の食材が生まれる——これが、マコモダケが「不思議な野菜」とも呼ばれる理由のひとつです。植物と菌の関係によって生まれる、自然の不思議ともいえるでしょう。

2. そもそも「真菰(まこも)」とは?

2-1. イネ科の多年草で、水辺に生育する植物

田んぼで栽培し、成長した真菰

真菰(まこも)は、イネ科の多年草です。文字通り、一度植えると何年も生き続ける植物で、川や沼、湿地などの水辺に群生して育ちます。環境の良い土壌では、高さが2mを超えるものもあります。

かつての日本では、真菰は特別珍しい植物ではなく、川や沼のほとりで当たり前のように見られる、身近な植物のひとつでした。都市開発や河川工事が進んだ現代では、自生している真菰を見かける機会はぐっと減ってしまいましたが、かつては日本各地の水辺で見られた身近な植物でした。

真菰は、単なる雑草として存在していたわけではありません。古くから、食用としてだけでなく、敷物やゴザ、屋根を葺く材料など、さまざまな用途に利用されてきました。私たちの祖先の暮らしは、真菰という植物と、切っても切れない関係にあったといえるでしょう。

2-2. 古事記・万葉集にも登場する、日本人と縁の深い植物

古事記、万葉集、日本書紀にも登場する真菰

真菰は、はるか昔から日本人によく知られていた植物でもあります。古事記や万葉集といった、日本最古級の書物の中にも、真菰や、真菰を編んで作った敷物を連想させるような表現が登場します。

『古事記』には「畳薦(たたみこも)」という言葉が登場し、倭建命(ヤマトタケルノミコト)の歌に見られる表現で、薦を編んだ敷物を表す言葉として知られています。

また、『日本書紀』にも「薦枕(こもまくら)」など、薦に関係する表現が登場します。

そして『万葉集』には、「刈薦(かりこも)」「水薦(みこも)」「薦枕(こもまくら)」「畳薦(たたみこも)」など、真菰に関係するさまざまな表現が登場します。

現在でも、真菰は単なる食材としてだけでなく、神事など、伝統的で厳かな場面で使われ続けています。その代表的な例のひとつが、出雲大社です。出雲大社では、真菰にまつわる神事や奉納の文化が、現在にもしっかりと受け継がれています。

出雲大社と真菰の詳しい関係については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。

 

2-3. 皇室の祭祀にも見られる真菰の存在

天皇陛下の大嘗祭の画像(イメージ)

真菰が日本の伝統文化と深く関わってきたことを示すエピソードは、出雲大社だけにとどまりません。

天皇陛下の即位に伴って行われる宮中祭祀「大嘗祭(だいじょうさい)」においても、真菰(真薦)が使われてきたことが記録されています。

大嘗祭に関する歴史資料では、天皇陛下が通られる際に真薦(まこも)が敷かれ、通過すると巻き上げられる「御筵道(ごえんどう)」について記録されています。令和元年に行われた大嘗祭でも、こうした真薦が使われました。

このように、普段は食材やお茶として親しまれている真菰が、皇室の重要な祭祀の場でも特別な形で用いられてきたことが分かります。

普段は食材やお茶として親しまれている真菰が、一代に一度という極めて重要な皇室の祭祀において、このように用いられてきた——そう知ると、真菰という植物への見方が少し変わってくるのではないでしょうか。

 

3. 真菰・マコモダケ・マコモ茶、3つの違いを徹底解説

ここまで読んでいただくと、真菰とマコモダケの関係が少しずつ見えてきたのではないでしょうか。ここで改めて、真菰・マコモダケ・マコモ茶、3つの違いを整理して解説します。

3-1. 真菰とマコモダケの違いは?

真菰とマコモダケの違いがわかる図

真菰とマコモダケは、まったく別の植物というわけではありません。

「真菰は、植物そのもの」
「マコモダケは、その真菰の茎が肥大した食用部分」

という関係です。例えるなら、稲とお米の関係に少し似ています。稲という植物があり、その一部分(実)としてお米が採れるように、真菰という植物があり、その茎の一部が肥大したものがマコモダケです。

「真菰」と「マコモダケ」は名前も発音もよく似ているため、真菰という植物全体のことを「マコモダケ」と呼んでしまう方も少なくありません。指している範囲がまったく違いますので、この機会に整理しておきましょう。

 

3-2. マコモ茶とマコモダケの違いは?

マコモ茶のイメージ画像

マコモ茶は、マコモダケを原料にした飲み物ではありません。

マコモ茶は、真菰という植物そのものを原料として、お茶として飲めるように加工したものです。商品によって原料や加工方法にはさまざまな違いがありますが、真菰の葉などを乾燥させてチップ状にしたものや、細かく粉末状に加工したものを、お湯で煎じたり溶かしたりして飲むタイプが一般的です。

つまり、

「マコモダケ=食べるもの」
「マコモ茶=飲むもの」

という、用途そのものが異なります。「マコモ」という名前が共通しているため混同されやすいのですが、マコモダケとマコモ茶は別のものだと覚えておきましょう。

マコモ茶の成分や選び方について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

 

3-3. 真菰・マコモダケ・マコモ茶を比較すると?

呼び方
何を指す?
主な利用方法

真菰(まこも)
イネ科の多年草という植物そのもの
食用、敷物、神事など

マコモダケ
真菰の茎が肥大した食用部分
野菜として調理して食べる

マコモ茶
真菰を加工して作られた飲み物
お湯で煎じて、お茶として飲む

ここまでの内容を、表にして整理してみました。

このように整理すると、3つの違いがひと目でわかりやすくなります。

一言でまとめるなら、

真菰は「植物」マコモダケは「食べ物」マコモ茶は「飲み物

まずはこの3つの分類を覚えておくと、マコモについて調べるときにも、情報が混乱しにくくなるはずです。

 

4. マコモダケ、よくある疑問と勘違い3選

4-1. マコモダケはキノコなの?

しいたけ、しめじ、えのき、えりんぎ、マコモダケ、の画像

名前に「ダケ(茸)」が付いているため、キノコの仲間だと思われがちですが、これまで解説してきた通り、マコモダケはキノコではありません。

真菰という植物の茎が肥大したものであり、一般的に野菜として食べられています。「山で採れるキノコの一種なのかな?」とイメージしていた方は、ここでイメージを修正しておきましょう。

 

4-2. 真菰を育てれば、必ずマコモダケができる?

自宅のベランダで真菰を育てている画像

これは、必ずしもそうとは限りません。

真菰を育てたからといって、すべての株にマコモダケができるわけではないのです。マコモダケは、真菰の茎にクロボ菌が寄生することで初めて形成されるものなので、真菰そのものを育てることと、マコモダケを収穫できることは、イコールではありません。「マコモダケを食べたくて、自宅のベランダで真菰を育ててみたけれど、思ったようにマコモダケができなかった」という声が聞かれるのも、こうした事情によるものです。

なお、真菰の栽培や株分けには、土壌管理や気候条件など、さらに専門的な知識と経験が必要になります。この記事では栽培方法そのものを詳しく扱うことはしませんが、「真菰を育てても、マコモダケが必ずできるとは限らない」ということを、ひとつの豆知識として覚えておいていただければと思います。

 

4-3. マコモダケはお風呂に入れた方がいい?

マコモダケを浴槽に入れた画像

マコモダケは食用として利用される部分なので、基本的には調理して食べるものです。

一方で、真菰という植物そのものは、古くからさまざまな用途で活用されてきました。現在では、真菰の草や、それを加工したチップ・粉末などを使った「マコモ風呂」を楽しむ方もいらっしゃいます。

では、マコモダケをお風呂に入れるのはどうなのでしょうか。

もちろん、マコモダケを浴槽に入れること自体はできます。ただ、マコモダケはせっかくの食材です。お風呂に入れてしまうよりも、焼いたり炒めたりして、その味やシャキシャキとした食感を楽しむ方がよいでしょう。

なお、出雲大社の涼殿祭(すずみどののまつり)では、参列者が受け取った真菰の草を風呂に入れると無病息災のお蔭がある、という古くからの言い伝えが紹介されています。ここで使われるのはマコモダケではなく、真菰の草です。

マコモ風呂について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

5. マコモダケ料理の魅力とは?

5-1. 下茹でなどの手間が少なく、調理しやすい

タケノコを下茹でしている画像

マコモダケの魅力のひとつは、比較的手軽に調理に取りかかれることです。

味わいがよく似ているタケノコの場合、生のままだとえぐみが強いため、米ぬかなどを使った下茹で(アク抜き)に、ある程度の時間と手間がかかります。

その点、マコモダケは、外側の皮を剥いて切り分ければ、そのまま焼く・炒めるといった調理に取りかかることができます。「タケノコのような味わいは好きだけれど、下処理が面倒に感じてしまう」という方にとっても、マコモダケは比較的挑戦しやすい食材といえるでしょう。忙しい毎日の中でも、思い立ったときにサッと調理できる手軽さは、旬の野菜を楽しむうえで嬉しいポイントです。

 

5-2. 焼く・炒める・炊き込むなど、いろいろ楽しめる

マコモダケと豚バラ肉で炒め物を作った画像

マコモダケは、調理のバリエーションが豊富なことも魅力です。

もっともシンプルな楽しみ方は、輪切りやくし切りにして、フライパンやグリルで素焼きにする方法です。マコモダケ本来の甘みと香ばしさを、そのまま味わうことができます。

また、細切りにしたマコモダケを、ベーコンや豚バラ肉と一緒にオイスターソースなどで炒め合わせるのもおすすめです。お子様のいるご家庭でも喜ばれるおかずになりますし、晩酌のお供にもぴったりの一品に仕上がります。

また、だし汁・醤油・みりんなどと一緒に炊飯器に入れて炊き上げる「マコモダケご飯」も、秋ならではの季節感を味わえる人気の食べ方です。シャキシャキとした食感を活かして、天ぷらにするのもよいでしょう。旬の短いマコモダケだからこそ、その時期にしか味わえない特別感も、この食材の魅力のひとつです。

 

6. 食べるだけじゃない。真菰にはこんな利用方法も

ここまで読み進めていただくと、真菰は「マコモダケを生み出すための植物」というイメージが強くなっているかもしれません。しかし、真菰は食用としての一面だけでなく、古くからさまざまな形で私たちの生活や文化に関わってきました。

6-1. 神事やしめ縄にも使われてきた真菰

出雲大社の神事(涼殿祭)で使われる真菰

真菰は、古くから日本人の暮らしと深く関わり、現在でも神事などの厳かな場面で用いられ続けている植物です。

先ほど紹介した出雲大社でも、真菰と深く関わる文化が大切に受け継がれています。
御本殿のしめ縄には地元農家で組織される「出雲大社御本殿真薦注連縄講社」によって、真菰で作られたしめ縄が奉納される文化が現在も続いています。
食材として見ているだけでは分からない、真菰が背負ってきた長い歴史と文化的な重みを知ると、日々何気なく口にしているマコモダケへの見方も、少し変わってくるかもしれません。

出典:出雲大社「御本殿の注連縄奉納」(https://izumooyashiro.or.jp/archives/hounou/8954)

6-2. 真菰のしめ縄について詳しく知る

出雲大社の拝殿のしめ縄の画像

真菰は、しめ縄などの縁起物としても、古くから利用されてきました。

「真菰を使ったしめ縄を、自分でも作ってみたい」
「一般的な稲わらのしめ縄とは、何が違うの?」

そうした疑問をお持ちの方に向けて、真菰のしめ縄について詳しく紹介する記事を、今後公開する予定です。公開の際には、こちらの記事からもご案内いたします。

→「真菰のしめ縄の作り方」(近日公開予定)

7. まとめ

マコモダケについて調べてみると、「真菰」「マコモダケ」「マコモ茶」など、似た響きの言葉がいくつも出てきます。しかし、ここまで解説してきた通り、それぞれが指しているものはまったく違います。

「真菰は、植物」
「マコモダケは、真菰の茎が肥大した食用部分」
「マコモ茶は、真菰を原料として作られる飲み物」

この3つを整理しておくだけで、マコモに関する情報がぐっと分かりやすくなるはずです。

そして、真菰についてさらに深く知っていくと、食材としてのマコモダケや、飲み物としてのマコモ茶だけにとどまらない、古くから日本人の生活や文化、神事などに関わってきた真菰という植物の、もうひとつの姿が見えてきます。

真菰の世界をさらに深く知っていくと、「マコモ菌」「発酵マコモ」という、また別の興味深いテーマにもつながっていきます。マコモ菌や発酵マコモについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。

真菰には、食べる、飲む、そして暮らしに取り入れるなど、さまざまな関わり方があります。まずは身近なところから、奥深い真菰の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

 

【参考・出典】

・出雲大社「凉殿祭(すずみどののまつり)」(https://izumooyashiro.or.jp/archives/saiten/12763)

・宮内庁「正倉院宝物特別調査 筵調査報告」(https://shosoin.kunaicho.go.jp/api/bulletins/48/pdf/0481001046)

・宮内庁「大嘗祭の骨子について」(https://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/shiryo/tairei/pdf/shiryo301012-3.pdf)

・宮内庁「大嘗宮の儀関係資料」(https://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/shiryo/tairei/pdf/shiryo011002-2.pdf)

・京都通百科事典「大嘗祭」(https://www.kyototuu.jp/WorldWide/DaijyouSai.html)

・JAグループ「マコモダケ|とれたて大百科」(https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=114)

・農林水産省「マコモタケ」に関する資料(https://www.maff.go.jp/chushi/syokuiku/katudou/attach/pdf/26_jireishuu-19.pdf)

 

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